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    「いや別に忙しいこともありませんですよ」

    「さうですつてね」

    「ジョン、そら!ウシ!」

    「どうしなさつた」

    「いや、そのうち。――ぜひ御相談があるんですが。――そのうち、一度来ていたゞいて。いや、私の方から出かけませう。や、又――」

    しばらく黙つていた後で、房一は

    徳次は指で真似をした。

    「あゝ、さうか。あゝ、さうか」

    「さうだ」

    昔はめったになかったように聞いているが、温泉場に近年流行するのは心中沙汰である。とりわけて、東京近傍の温泉場は交通便利の関係から、ここに二人の死場所を択ぶのが多くなった。旅館の迷惑はいうに及ばず、警察もその取締りに苦心しているようであるが、容易にそれを予防し得ないらしい。

    練吉はそれなり黙つた。

    盛子は時々半ば無意識に呟いた。

    と、父親の顎のあたりに又目をつけた。

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